2011年02月15日

マイフィクサー

以前、イルフォード社の専用薬剤として中外写真薬品が売り出していた定着剤に「ハイパムフィクサー」というのがありました。これは自社ライセンスのため今では「マイフィクサー」と名前が変わってしまいましたが。

この定着剤、印画紙に使用するにはいいけど、フィルムにはちょっとした注意が必要です。
非硬膜タイプなので爪のスクラッチ跡がよく出来てしまうのです。
特に夏場など高温のまま使ったりすると大変なことになってしまう。

スポンジでぬぐった瞬間に膜面が剥がれ落ちた人もいます。

メーカーになぜ硬膜剤を入れておかないの、って聞いたら、硬膜剤を入れると日持ちがしないし、処理時間も延びるとのこと。
そうなのか・・・・・。
ちなみに、この薬品は疲労度をハイポ計で測ったりできません。
たとえ新液でも測った瞬間にドボンと沈んでしまいますので、念のため。


余談ですが、中外写真薬品さんの液体の薬剤のロットナンバーの読み方には法則があります。たとえば「0123T」と記載されていた場合で最初の「0」は2010年、つまり年号の末尾を表し、「123」は123営業日に作られたものです。Tは聞いてなかったけど出荷元かな。おそらく東京のTでしょう。

ということで、何かのお役に立てれば。

posted by 暗室奉行 at 00:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 豆知識 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月13日

過度な水洗の弊害について

人間、体にいいことは何でもやってみたいと思うのはアタリマエのことです。
その中の一つが「泳ぐ」ということ。
水の中で全身を使うわけですから、筋肉はほぐされて活性化する・・・これは体にとてもいいでしょう。

ところが印画紙が全身運動で泳ぐ、という環境は紙を傷めてあまりよくありません。

これ、実際にあったことですが・・・・・

売り場で勤務していた頃、こんなクレームを聞いたことがあります。
内容は、最近買った印画紙が古いものではないか、という内容。
印画紙のフチの周辺が変色して黄色味を帯びているのです。

対象となったのイルフォードのRCペーパーで25Mという六切サイズのものでした。
イルフォード社の場合、ロットナンバーは記載されているものの基本的には期限の線引きはありません。

私はすぐにメーカー(代理店)に連絡をしました。
問い合せた内容は二点。このロットナンバーの印画紙が古いものに該当するかどうか、ということと、このロットナンバーでの事故報告があるかどうか、ということ。
結果はどちらもシロ。となればお客さんの使用環境による問題が大となります。

問題の印画紙でプリントした写真を机の上において見てみると、RCペーパーのくせにずいぶん平面性が悪いように思われました。

私は事故のあった残りの印画紙を預かり、自分の家の暗室でプリントしてみました。
フチが黄色くなるという現象はまったく見られません。

結論から言えば「変色」については

1)定着時間が長すぎた
2)水洗時間が長すぎた

の二点が原因で紙の繊維が崩れて定着抜けが悪かった、ということ。

またクレーム外の「紙の平面性の悪さ」については

浴槽での水洗で大量に水を流しっぱなしにしていた可能性があるということ。
結果、水圧で泳いだ印画紙が変形してしまったのではないか、ということでした。
これ、人間で言えばドザエモンですよ。

そういえば市販のプリントウォッシャーは平面構造のものばかりです。

後日、お客さんに報告するとすべてビンゴだったようです。
浴槽で水洗処理をしている方は多いと思われますが、なかなか水圧までは考えが及ばないものです。

教訓でした。




posted by 暗室奉行 at 10:10| Comment(2) | TrackBack(0) | 失敗分析 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年02月11日

ある達人の一言

写真の展覧会場、そこは紳士淑女の社交場であります。

私は来場者の立場なら仲間作りの場、と言ったこともありましたが、出展者にとってはお客さんからの反応をうかがえる大切な場でしょう。

ところで、とある写真団体の写真展がギャラリーで開催されていた時のこと。
出展者の友人S氏の作品の前でふと足を止めたベテランI氏の一言が気になりました。

「彼・・・苦労しているな。」

そりゃそうです。個展作家はこの日のために撮影から製作まで時間を削り、印画紙や薬品を消費し、やっとの想いで出展にこぎつけるのですから。
しかし、考えようによっては非常に意味の深い言葉です。

「うーん、かなり大変だっただろう・・・」

つまり、自分も写真作家として苦労のポイントはわかるし、意図する最終形に仕上げるまでは数々の困難を乗り越える必要がある、そういうことでしょうか。
S氏を良く知る私としては、ベテラン同士に通じる会話と見て黙って聞いていました。

私が後でS氏に耳打ちすると、彼は「そうか、あの人も解ってくれたか」というようなことを言っていました。しかし・・・・

制作に対する共感だけでこの言葉が出たのでしょうか。
考えようによっては、違う意味も含まれているような気がいたしました。

作品から苦労の内容が読み取れてしまう。

むしろ、こっちの解釈の方があてはまるようにも思えました。
つまり、難解な仕上げ、覆い焼きや焼き込みの難易度を乗り越えて作品を仕上げた共感に対しての言葉というよりは、長時間にわたって暗室に篭城してへとへとになって最終形にこぎつけたことがバレてしまうポイントもあるのです。

それは、現像液の疲労度。

通常、ある程度の枚数をこなせば現像液の疲労が進行し、それが写真に現れてくるものです。
でも作業している本人は気づかない。
覆い焼きや焼き込みで絵柄の調整に想いを込めるあまり現像液の疲労を忘れてしまっている、それが作品に出ているのを指摘された可能性もあるのです。

何日も暗室に篭城する・・・私にも何度か経験がありますが、自分の想いを作品制作に集中させようとするあまり、他の点がおろそかになってしまいます。
結果、それは作品に現れてしまいます。

「彼・・・苦労しているな。」

新しく現像液を溶いてからそこへ至るまでの時間、I氏はそれを共感していたのかも知れません。

仮の話ですが、S氏がそこに気づいて新液からやり直していれば、I氏は「ほう・・・」と言っただけかもしれませんが。
ま、それはそれとして・・・


作品に自分自身が現れる、それを理解できる人が見てくれる、そんな暗室モノクロがステキじゃないですか。





posted by 暗室奉行 at 08:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 奉行の訪問記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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