2011年01月10日

廃業の写真屋を訪問した日

もう、十年近く前のことになります。

私の元に一本の電話が入りました。
何でも、今度廃業する写真屋が中古の引き伸ばし機を処分したがってるので引き取ってやってくれないか、との事です。

その方とは電話でのご縁でしかなかったけど、ずいぶん世話になった人でした。私はとりあえずOKし、先方と少しのやり取りの後、車で現地へ向かいました。

現地へ着いたのは昼前で、挨拶をし、中へ入ると人のよさそうな長身のご主人が座っています。早速、私は用件を切り出し、さっさと済ませるつもりでした。

「いくらで買ってくれるのか?」
「は?」
「買取だろ……?」
「いえ………。」

処分、と聞いたて来た旨を話すと主人は明らかに不機嫌そうになりました。当然ですね、話が食い違ってますから。

しかし、相手はよほどヒマだったのか、話し相手に飢えていたのかはわかりませんが、ここからマシンガン・トークが始まります。自分の苦労話、自称プロの実態、業界の話から近所のお得意さんの話まで喋る、喋る、、、、。私は一方的な聞き手になっていました。

いや、別に人の話を聞くのは嫌いじゃないし、いいんだけどいい加減に腹が減ってきたもので、そろそろ本題に、と思った時にはすでに二時間が過ぎていました。

で、肝心の対象はフジのB型の引き伸ばし機、当然ボロボロです。それとFCの大四つ切対応の乾燥機と、あと小物数点を持ち出してこられたわけですが、ここで主人が条件提示をしてきました。

なんでも、長年連れ添ったパートナーだから自分の納得のいく相手に渡したい、とのことでした。そこで私を見て、どれだけ暗室やモノクロのことを理解しているか、熱意があるかを試させてもらう、と申し出てきたのです。(まだ続くのか〜、腹減ってるんだけど・・・何が何でも欲しいわけじゃないし・・・)

内容は主人と暗室モノクロについて問答し、自分が認めれば売ってもいい、とのことです。話はバライタのフラットニングや調色、プロに頼んで“焼き比べ”をした事や、出版を考えて色々な実験まで試みた経験にまで及びました。実はここで、もう話は物別れになってもいい、と思っていたのです。ともかく空腹だったもので。

しばらくしてご主人は私を理解してくれたらしく「言い値で譲る」と言ってくれました。売り先は見当がついていましたが、それでもトータルで一万円以上出すつもりはありません。

そこで私はある提案をしてみました。引き伸ばし機は地元の高校の写真部に寄付した方が気持ちいいのではないか、と。すると驚くべき返事が返ってきました。

この近辺の高校には写真部がない、というのです。写真熱がないからクラブがないのか、教えられる先生がいないからないのか、はわかりません。写真のクラブ自体がない、というのが驚きでした。

結局、一万円ですべて買い取って店を後にするわけですが、店を出たのが3時半、空腹も限界でした。

しかし、当時はモノクロ熱もかなりあり、ある大学の写真部では暗室の前に順番待ちの列が出来ると聞いていましたが、一方の高校ではクラブすらない、というアンバランスな現状があったのです。

今は、果たしてどうなのでしょうか。



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posted by 暗室奉行 at 10:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 奉行の訪問記録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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